お客さまからは「銀行の窓口の女性は、涼しいところで座って仕事が出来て良いね」と言われる事もしばしばありますが、テラーの仕事は実際はそんなに甘いものではありません。
窓口業務を経験した人にしか分からないような苦労や、辛い経験が山ほどあり、悩みを抱えている女性行員が多いのも事実です。
銀行の窓口業務(テラー)が抱える悩みについてご紹介させていただきます。
目次でパッとみる見出し
経験者のみぞ知る、銀行の窓口が辛いと思う瞬間
銀行の顔とも言えるテラー業務は、一見華やかな仕事のように見えて、そうではないのが現実ですが、中でも一番辛いと思う瞬間は、お客さまから怒鳴られるなど、クレームを受けた時です。
クレームは「待ち時間が長過ぎる」といった、実際にお客さまにご迷惑をおかけしてしまっているものから、「後ろの席に座っている行員がこっちをこそこそ見ていた」という、何の根拠の無いものまで内容は様々です。
また、たとえ自分がミスをしてしまった訳ではなくても、最終的にお客さまに謝罪をするのは、窓口を担当しているテラーの仕事になります。
周りにも沢山のお客様がいらっしゃる中で、お客さまから大声で怒鳴られ続けるあの瞬間は、正に辛いという言葉しか浮かんできません。
加えて、例えばお客さまから「もっと早く処理をしてほしい」とクレームを言われた場合、窓口後方で事務を担当している行員に、その旨を伝えるのですが、その事務担当の行員も急いでいない訳ではないので「もう少々お待ち下さいとお伝えして」という答えしか返ってきません。
このように、テラーはお客さまと後方事務担当行員の板挟みになってしまう、辛いポジションでもあるのです。
テラーは常に危険と隣り合わせ
テラー業務は、常に危険と隣り合わせの仕事でもあります。
銀行強盗や、銀行員を人質に取った立てこもりのニュースは人ごとではありませんし、実際、防犯研修は必ず一年に一度は行われます。
警察官が銀行強盗役に扮し、エアガンのようなものまで使用して、本番さながらの臨場感たっぷりの防犯訓練を行います。
入行して、この防犯訓練を経験すると、テラーがいかに危険に晒されているかを実感させられます。
また、最近では銀行強盗だけでなく、別人になりすました人物が銀行の窓口を訪れ、他人の口座から現金を引き出そうとする犯罪も横行しています。
そういった危険人物を目の前にしながらも、平静を装い、警察が到着するまでの間、時間を稼ぐのもテラーの仕事です。
このような悪事を働くような人物が、どのタイミングで刃物や拳銃を出してくるかは分かりませんし、手の震えがばれない様にするだけでも精一杯です。
テラーはただ座ってニコニコしていれば良い、楽な仕事だと思われがちですが、実際は緊張感や危険と隣り合わせの、辛い仕事でもあるのです。
モニター対応は苦行
窓口担当者の辛い部分はこれだけではなく、金融機関にはモニター制度というものがあって、外部の調査員がお客さんに成りすまして来店し、各支店のお客さま対応を評価する制度があります。
例えば「テラーの爪は長過ぎないか?」「派手なメイクをしていないか?」「髪の毛は肩についたら高過ぎない位置で一つに結っているか?」など、身だしなみを驚くほど細かくチェックされます。
また、「お辞儀の角度」や「手の位置が不自然ではないか?」、「えっと…」や「…という形で、」といった不自然な言葉遣いをしていないか?なども評価されます。
このモニター結果には、チェックされた人の名前も書かれているのですが、還元された結果が廊下に張り出され、他の行員にも公表されます。
これには、今回の結果を受けて「次回以降の為にも皆で気をつけましょう」という意味でもあるのですが、窓口担当者にとっては、このような行為は見せしめ以外の何ものでもありません。
このモニターの結果は、支店の表彰成績にも直結するので、上司からのプレッシャーもかかってきますし、辛いと感じているテラーは多いのです。
テラーとロビーの難しい関係
銀行の窓口担当者が苦労しているのは、対顧客に限った事ではなく、行内でも悩ましいことが起こっています。
テラーは常に銀行のロビーでお客さま対応をしているロビー担当者と連携を密にして仕事を進める必要がありますが、それが中々上手くいく事ばかりではないのです。
ロビー担当者は、正社員ではなくパートとして働いている女性たちがほとんどなので、いくら研修を受けているとはいっても、お客さまに間違った案内をしてしまうケースもしばしばあります。
「不明確な事は一度行員に確認してからお客さまに回答して下さい」とこちらがお願いしていても、実際は「お客さまがお急ぎだったので」と、無責任なことをしてしまうパートの女性が多いのです。
ロビー担当者が、お客さまに的確なご案内ができるよう指導にあたるのも、実はテラーの仕事になっています。
しかし、自分の母親よりも年上の女性に、仕事内容を指示したり、お辞儀や言葉遣いの指摘をしたりするのですから、人間関係がそう簡単に上手くいく訳がありません。
このような関係性であるがゆえに、仕事上での連携も上手くいかなくなってしまい、更に負のサイクルに陥ってしまうのです。
テラーにとって、ロビー担当者との関係の難しさについては、頭の痛い悩みなのです。
意外に多い、窓口でのナンパ
銀行窓口で働いている女性が、意外に悩んでいるのが「窓口でのナンパ」です。
窓口で対応した方が、帰り際に自分の名刺を置いていったかと思うと、裏に「今夜僕と飲みに行きませんか?」と書いてあったり、堂々と窓口で「電話番号を教えて下さい」と言われることもあるのです。
また、口座開設をしたお客さまに気に入られてしまい、用事もないのに毎日のように窓口に来店するようになってしまった、ストーカーのような事例もあります。
窓口でのナンパの場合、誰にどう相談したら良いのかが難しく、なかなか解決しないのが辛いところです。
テラーはどこまで丁寧に窓口対応をすべきなのか!?
銀行の中は、夏は涼しく冬は暖かいので、昔から散歩途中のお年寄りの方が、休憩のためにロビーの椅子に座っていることは珍しいことではありません。
しかし、最近はそれが段々とエスカレートしてきている現実があります。
ただロビーに腰かけているだけではなく、番号札を引いて窓口にまでやってきたかと思うと、通帳の記帳を依頼し、それが終わると延々と世間話を始めてしまうのです。
もちろん、通帳の記帳はATMで出来ますから「次回以降はATMでお願いします」と伝えるのですが、毎回同じことが繰り返されます。
更には、通帳記帳だけをして「サランラップ」や「ウェットティッシュ」などのお客さま用ギフトを要求してくるお客様さまもいらっしゃって、対応に困る事もしょっちゅうです。
もちろん、テラーはお客さまの顔も次第に覚えていくので、お喋りが目的のお客さまが来店された場合には、なるべく早くお引き取り頂けるように対応するのですが、お客さまに対して失礼な対応は出来ませんので、葛藤があり辛いところです。
辛い思いをしてまでテラーにこだわる必要はないのでは?
銀行の窓口業務の仕事は、周りから見られてる以上に精神的にもしんどいし、辛いことが多いのですが、その割にはとても見返りの少ない仕事です。
これは、経験した人にしか分からない部分ではありますが、丁寧な接遇対応をするだけではなく、正確性も求められますし、お金を扱っているのでもちろんプレッシャーもかかってきます。
テラーの仕事を経験していれば、他の仕事にも活きることが沢山ありますし、貴方を受け入れてくれる企業というのは山ほどあります。
現状が辛いと嘆いているだけでなく、広い視野を持ち、他の仕事にも目を向けてみるなど、転職を考えてみるのも、今の悩みを解決する一つの方法かもしれません。